有文先生の妖怪本と『はらだし』
子供の頃、水木先生の妖怪本を読むのがムチャクチャ怖かった。ついでに言っとくと今でも怖い。リアルな背景と今にも動きだしそうな妖怪達。あまりの怖さに寝る時電気を付けっぱなしにして、しょっちゅう親にド叱られたものであった。そんな怖がりオブ怖がりズ(何だよそれ)な俺の元に、ある日一冊の本が現れた。
「いちばんくわしい 日本妖怪図鑑」(立風書房)
………コ、怖ェェ〜〜〜ッ!!!
何ちゅうかもう怖いのだ。石原豪人先生描く迫力満点のイラストと共に理不尽な理由で人をブッ殺しまくる妖怪が次々登場して、何から何まで怖いのだ。
しかし、そんな中1人だけ妙にほのぼのしたオーラを放つ妖怪がいた。
それが『はらだし』である。ま、とにかくどんな奴かは実際に絵をみていただきたい。
この一分のスキもないポーズ!素敵な笑顔!
名だたる武術家も思わず「参りました!」と土下座して謝りそうな勢いである。
しかし、素敵なのは絵だけではない!説明文もまた実にいいのだ。
推測する所、有文先生もかなり『はらだし』のことがお気に入りだったらしく、先生の妖怪本ではほとんどレギュラー(って何だそりゃ?)の様に毎回登場している。そして遂に「妖怪大図鑑」(小学館)では表紙デビューを飾ってしまうのだ。
ちなみにこの「妖怪大図鑑」(この本では『腹出し』と記述されている)のイラスト&説明文も実にいい塩梅で、「いちばんくわしい〜」と甲乙付けがたいフレンドリーさである。これも実際に見てもらいたい。
で、文章はというと、
……うちに来てくれ〜ッ!! もとい、是非お越しになって下さい! そう叫ばずにはいられないこの温かさ。イイ!ほんとイイ!
惜しむらくは、有文先生の妖怪本では2005年5月現在唯一新品で買える『妖怪大全科―決定版』(秋田書店)に『はらだし』が登場していない事であろうか。
有文先生以外の妖怪本と『はらだし』
と小見出しをつけてはみたが、実はあんまり『はらだし』が出てくる本がない。そんな中「はらだし」が登場する数少ない妖怪本「小学館のコロタン文庫62・世界の妖怪全百科」(小学館)と「ケイブンシャの大百科215・日本の妖怪大百科」(ケイブンシャ)を紹介してみたい。
まずは「世界の〜」から、
続いて「日本の〜」を紹介。
『はらだしは、荒れ果てた古寺にすんでいる。いろいろなものに化けたり、自分の腹のまん中に作った人間の顔をみせて、人をおどろかすいたずらもするが、本当は親切な妖怪だ。とくに知らない土地で道に迷った人を寺にとめるのが好きだ。昔、吹雪の中で道を見失った人が、はらだしにたすけられ、暖かい部屋でごちそうをだされたという。人のいない古寺には、今もはらだしがいるかもしれない。』
イラストについては下をクリックして頂きたい。
「古寺」「腹に顔」「おっさん」で共通しており(ライターが一緒かどちらか一方のライターが参考にしたかのいずれであろうか)、どういうわけか有文先生とは毛色が違うのだが、基本的に親切ないい奴という点は一致している。ひょっとすると単に腹踊りを持ちネタにする親切なおっさんだったのかもしれないのだが、そこは深く考えない(笑)
それにしても、この有文先生版とは全然違う『はらだし』、元ネタはいったい何なのだ?
個人的考察
有文先生が『はらだし』を創作したのは、「散々怖がらせちゃってごめんね。でも中にはこんな愉快な奴だっているんだよ。」と子供達を和ませようとした先生の優しさだったんじゃなかろうか、などと思ってみたり。あるいはこういう妖怪を創作して、妖怪たちの事を好きになってほしいと考えたのかもと思ってみたりとか。「友達になってほしい」「遊びに来て欲しい」、『はらだし』にはこんな気持ちにさせる魅力が確かにある。
有文先生が他界されてしまった今、それらを確かめる術はないのだが、少なくとも管理人はそんな風に考えている。
映像に見る『はらだし』
「跋扈妖怪伝 牙吉」に登場。安藤希扮する美少女・桔梗を幼い頃から世話してきた優しい奴で、普段人の姿でいる時は「どろちゃん」という名で呼ばれている。劇中では真っ先に人間達に殺害されてしまった(このシーン思い出すだけで腹立つ…)
「行け!牛若小太郎」で、「酒飲み妖怪はらだしの巻」に登場。主人公・牛若小太郎とは旧知の仲だったらしく妙に親し気であった。劇中では酒を飲ませてもらったお礼に、小太郎の危機を知らせる義理堅い奴である。